0448 転職のスキル、準備編45 意思決定4

前回ブログ(1)〜(6)のアイコがプレゼントを購入するまでの流れです。

一見簡単に思える選択にも、かなり複雑なプロセスの上に成り立っています。また、規模が大きく、利害関係が多数に及ぶ問題解決の意思決定も同様のプロセスを踏みます。つまり、意思決定が行われる過程に、規模や性質によって異なることはなのですが、一つひとつの過程がより複雑になり、高度な意思決定が要求されます。

この意思決定の能力は、個人の資質が深く関わってきます。例えば「先入観」や「思い込み」、あるいは「プライド」や「価値観」などが適切さを阻む要因になり得ます。本来、適切な意思決定を行うには、これらの要因を除くことが大切なのですが、なかなか困難で、自己においてその資質を自覚し、リスクとして考慮しなければなりません。

具体的な事例でいけば、傷病の治療方などがよく話として聞きます。医師は自分の専門的分野の治療範囲で治療方法を決定します。外科医であれば手術を行い、内科医であれば投薬治療を試み、どちらでも治らなかったガンが重粒子線治療で回復した例を知っています。これはコーディネートする役割の方が、担当医に断りを入れ、他の治療法を患者に勧めて実現したのでした。患者からすれば、早く、リスクがなく、費用も安く済むことが一番有り難いのですが、担当医は自分が得意とする専門治療から考え、プライドが高く、どの治療が一番適しているか、他分野も含めて考慮することは殆(ほとん)どありません。

なので、外科医であればどのような手術が有効であるかを考えてくれますが、投薬やその他の治療方も平等に可能性を探るわけではありません。患者は知識がありませんから、治療方法において意思決定は、医師に任せるしかありません。結果的には不利が生じることも現実には起こっています。また、意思決定が個人の資質によって精度を欠く場合では、専門性や知識、思考法も挙げられます。

先のアイコの場合、かなり個人的な状況下での意思決定、つまり「相手の気分を害する」と言うリスクさえ避ければ、気ままに選択しても差し支えない意思決定と言えます。しかし、このような個人的な意思決定と対局にある政治的な意思決定では、その複雑さを極めます。

政治とは少し異なりますが原発事故を対処する意思決定機関での選択は、少し考えただけでも疲れてしまいます。原発事故被害に対する説明責任や救済を果たすため、その見解や決定事項を、メディアを通じて公表するとき、それらの纏まったプランに対して意思決定を構成する要素は膨大です。まず、事故の原因、一箇所か複数箇所か複合的か、物理的か人為的かソフトウェア等か、そしてその範囲やレベル。それからその事故原因には違法行為やガイドライン等のマニュアルを逸脱したものであるか否か。事故に起因する地域への被害、これについてもその範囲や程度、どれくらいの規模で、どのような対処をするのか、対処の場合は被害地域の範囲を決める基準、それに被害者数と被害レベルと時間経過によって変化する被害状況、原因究明の進捗、事故処理に対する人員確保とその安全保障、そのスケジュールや進捗(しんちょく)、物損被害の総額、事故処理に掛かるコストの予測、資金の捻出や調達のスキーム、専門家等の意見や情報収集とその分析、これから起こる可能性があるリスク、電力会社、メーカー(重電と建設会社)、政府(内閣府内閣官房経済産業省文部科学省など)の責任範囲と役割の確認、マスコミの質疑応答などの対策・・・・・様々な問題と確認、そして関係、関連する部署や企業、特殊法人系や政府との意思疎通、説明時の言葉の選択と注意、目的、落としどころ、基本姿勢、倫理性、ありとあらゆることが問われ、責任や利害関係は複雑に絡み、しかも状況は時間と共に変貌してゆきます。このような状況下で最適な意思決定、最小限のリスクで治まる意思決定、こうなると誰にも分かりません。(ウィキッド・プロブレム・ソルビング = 利害関係者が多数絡み、意思決定のプロセスは複雑で、なおかつ正しい解答はない) 

次回にあらためて意思決定におけるプロセスを整理してゆきましょう。


★総合案内ビジネスていレベル研究所http://d.hatena.ne.jp/sotton+sogou/