0460 転職のスキル、準備編57 コミュニケーションスキル5

(3)ノックアウト・ファクター
これはリスクの一つですが、会話をする相手のどこに潜んでいるかは分かりません。ノックアウト・ファクターは相手が嫌悪を顕(あらわ)にするコミュニケーションでの言動です。

例えば、あなたが何かのセールスで新規開拓のため飛込み訪問をするとします。初対面、見ず知らずの人に自社の製品について、どれだけ優秀で、どれだけあなたに利益を生み出し多くの貢献をするのか、その製品の必要性を説くのです。あなたは喫煙者で緊張を解(ほぐ)すため、馴れない仕事のストレスを感じて、大事な新規開拓の訪問前にタバコを何本となく吸ってから臨んだのです。ところが相手はタバコ嫌いで、煙はもちろん、その匂いを仄(ほの)かに感じただけで強い不快感に襲われ話を聞くどころではありません。しかし、あなたは気がつく事もなくセールストークに夢中です。これでは商談の結果も困難になってきます。

このようにノックアウト・ファクターは、あなたの言動によって相手は嫌悪と不信を抱き、心理的に強い不満や警戒心、あるいは強固な防御態勢をとり、あなたの発言内容はもちろん、あなたそのものの関係性を拒否する可能性を孕(はら)みます。

話し手からすれば、このリスクはコミュニケーションを行う上で避けなくてはなりません。また、同時に受け手である相手も望んでいないことで、常に触れたくない部分を意識しているわけでもありません。しかし、ノックアウト・ファクターの問題は、予め予想できる範囲と、全く予測不能な固有の問題が存在します。聞き手が無防備で、好意的であったとしても、話し手の言動がきっかけとなって感情を刺激することは少なくありません。
ノックアウト・ファクターで予測できるリスクというのは、常識的な範囲に留まります。「相手との関係性」「立場や状況」「性格や理解力」「会話の場所」等が主なリスク要因となり、聞き手の決定権と同様ですが、ノックアウト・ファクターはその致命的リスクを指します。

これに対して個別に発生するリスク、ノックアウト・ファクターは相手個人の性格的な性質、例えば悲観的であったり、心配性、神経質、懐疑的、楽観的、価値観や先入観、知識格差、興味の喪失など、その個人の特有な性質、状況を考慮するものです。しかし、これらの対応には、相手に対する人的興味はもちろん、関係性や親密度、立場や場所などの環境的考察、相手と接することで観察や想像によって注意を払い、探る他ありません。
さて、先に紹介したコミュニケーションにおける3つの法則は、その法則を知らずとも、また意識しなくとも現実に起こるリスクであり、効果であります。聞き手の決定権とノックアウト・ファクターは自分が話し手であるときのリスクで、聴く効用については自分自身の役割は受け手であり「聞く技術」が試されます。

ノックアウト・ファクターはどこにどのようなリスクがどの程度、潜んでいるのかは関係性の継続、いくらかの時間を共有しないと困難です。性格や先入観はもちろん、年齢や性別、その場所での状況、様々な要因が考えられますので、対処があるとすれば「常識の精度を高める」といった、少し曖昧な表現でしかありません。
聞き手の決定権についても同様なことが言えますが、大雑把(おおざっぱ)なリスクを紹介するよりかは「交渉術」と「詐欺師」の話しから具体性を探った方が楽しいでしょう。しかし、これより先に「聞く技術」の簡単な紹介から始めましょう。

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