0285 所得税88 譲渡所得18 担保物権2 抵当権

前回に引続き、担保物権について進めてゆきます。

(4)抵当権(民法369条〜398条)
抵当権も担保物権ですから、目的は債権回収における優先的な弁済の確保であります。質権の場合は、担保となる物を取上げて、債務者が返済できない場合にその物を売って債権回収に充てますが、抵当権では物を取上げずに、債務者に使用させたままで、登記によって権利を設定し、返済ができなくなった時は質権と同様にその物を処分して債権回収に充てます。債務者の方は担保にする物が取上げられることなく、そのまま使用できるので、そこから経済的な活動ができ、利益をあげることができる利点があります。

質権も抵当権も「約定担保物権」なので、当事者の契約によって対象物や法的な範囲内での権利設定ができます。質権は主に動産が対象、抵当権は主に不動産が対象となります。特に抵当権の場合は、権利設定が登記で行われる物に限られてきます。つまり、質権のように簡単に取上げることができない「物」、それは土地や建物なので、不動産を質権のように担保とするために、住んだり利用したりすることは何かと大変で不経済であるので、登記制度を利用して、権利を主張できる法としているわけです。

抵当権の効力としては「先取特権」「留置権」「質権」の性質を含んだものと言えます。従って、債務者の弁済が満額完了しないと取上げた物を返す必要はなく、抵当権も同様で弁済が全額完了すると債権が消滅し、同時に登記の抹消を行うことで債権債務関係が終わります。
抵当権は約定担保物権なので契約により抵当権の範囲を設定できますが、通常の設定範囲は「元金」「利息」「違約金」「遅延損害金」「抵当権実行費用」となっています。

尚、抵当権の法律は民法以外にも工場抵当法や自動車抵当法、航空機抵当法など他があります。
★ 不動産登記については当ブログ276〜278→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130521

(5)根抵当権民法398条の2〜22)
抵当権を設定する場合は、決まった債権であるので金額が予め確定されています。例えば、住宅ローン等では金融機関が新築物件に対して融資額を決め、抵当権を設定します。つまり発生した債権に対して抵当権の設定を行うわけです。しかし、根抵当権では担保を取っても、債権や金額が確定しないまま極度額(限度額)を定めて設定します。これは発生した債権ではなく、将来に発生する債権に対して行います。このように根抵当権は特殊な抵当権であるため設定要件として、その債権の範囲は契約締結による「債務者との特定な継続的な取引から生じるもの」とされ、この中には小切手や手形の債権も含むことができます。

個人事業や小規模な会社ではよくあることですが、銀行から融資を受ける場合、その事案ごとに抵当権を設定し、返済が終えると登記抹消を行い、となると継続性のある融資は面倒で不可能となってきます。このようなことに対し根抵当権では、担保になるものを査定し、設定で極度額(融資限度額)を定め、その範囲で融資を行うようにします。尚、極度額を超えた分には効力がありません。

根抵当権の行使については、予め元本確定の期日を設定します。つまりその期日によりそれまでの期間を清算することによって債権額が確定し、確定後は普通抵当権としての効力とほぼ同様になります。確定期日の設定は契約当事者で自由に設定できますが、最長でも5年以内とされています。また確定期日を設定しなかった場合、債権者(根抵当権者)はいつでも請求できるとされ、元本が確定します。また3年を経過すると債務者(根抵当権設定者)からの請求も可能とされています。債権者からの請求では、即日元本確定しますが、債務者からの請求では元本確定は2週間後になります。

(6)仮登記担保権(仮登記担保法)
仮登記は本登記のための予約で、仮登記をすることによって時期が到来すれば必ず本登記ができ、所有権が移転します。この制度を利用して債務者の返済等が滞ったとき、債権者は仮登記を本登記へと移し、優先的な弁済を受けます。

(7)譲渡担保権
動産、不動産を問わず担保される物を債権者に譲渡し、債務の弁済が完了すると債権者は譲渡した物を債務者に返し、弁済ができない場合は処分して債権回収に充てます。
仮登記担保権も譲渡担保権も、契約当事者で内容を設定できる約定担保物権ではありますが、質権や抵当権のように民法の条文によって規定されている物的担保ではありません。判例上認められる物的担保(非典型担保物権)とされています。尚、現在では仮登記担保権について「仮登記担保法」が在ります。

※物権は、そのものを支配できる状態であるため、通常は譲渡が可能です。従って担保物権の場合も同様に譲渡ができるようになっていますが、上記ではそういった担保物権の移転等に伴う内容は省いています。質権や抵当権にしても債権者が変わった場合には、より権利の効力が複雑になってきます。この内容については一定の確認をしておりますが、確かな情報を必要とする場合において、また、現実にこれらの契約や利害関係が働くような場面では必ず、専門家の方にご相談、ご確認をお願いします。

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