0137 老齢基礎年金5 改定率について

前回にお伝えした「年金受取額の計算」の中で、全期納付に対する年金給付額(788,900円の金額)が、どのように確定されるのか?つまり「改定率」とよばれる調整が、毎年行われることによって、少しずつ変動してゆくわけですが、正確な計算方法より、どのような仕組みであるのか?を書いておきます。大雑把に言えば、物価変動や情勢に伴って、年金の価値も見直します。そんな感じです。

1,物価変動率
前年の物価に対して何%上下したか。

2、物価スライド率
物価スライド率も同様に前年からの対比ですが、調整が行われ、物価変動があっても、スライド率は前年と変化なし、という年度もあります。

3,マクロ経済スライド
少子化や寿命の長さ等の、社会情勢の変動(保険料負担能力の伸縮)を給付に反映させ調整する方法で、年金の被保険者の減少率と年金受給期間の伸び率で 算出されたものを「スライド調整率」といいます。

このスライド調整率とは、年金を納付する者が減少してゆき(マイナス0.6%)、受け取る者が増加してゆく(マイナス0.3%)乖離で、平成37年までは毎年0.9% 程度見込まれ、つまり、年金の納付、給付のバランスが毎年0.9%ずつ不足してゆく感じになります。

4、名目手取賃金変動率
「実質賃金変動率(3年平均)」 × 「物価変動率」 × 「可処分所得割合変化率」の数値

5、改定率 
改定率も平成16年を1とした基準で、物価変動率に伴っていますが、物価変動だけではなく、賃金変動でも調整があり、改定率が決定されます。
本来この改定率は、68歳未満の新規裁定者(受給権を請求によって行使する者を、その権利獲得、権利範囲等を確認する制度)には名目手取賃金変動率から、68歳以上の既裁定者には物価変動率から、それぞれスライド調整率を差し引いて算出されます。

もともと日本の年金は物価スライド制で、平成16年に改正があり、その算出方法が改定されました。平成16年改正時の最大給付額は780,900円とされ、これに毎年の改定率を乗じた額が、決定額になるように定められました。

平成16年改正の780,900円という金額は、その前回の改正、平成12年時の水準804,200円に、それまでの物価下落率の2.9%を減額した数値ですが、物価スライド特例措置として平成12年の水準に物価スライド率を乗じた金額とされています。これによって平成23年度にあたる年金給付額は、804,200円 × 0.981 (物価スライド率)= 788,900円 
と、なっています。この特例措置がない、本来の計算では、
780,900円 × 0.985 (改定率)    = 769,200円 と、なります。
(年金給付額の計算の場合、50円未満は切捨て、50円以上は100円として切上げです)

物価スライド特例措置には、もう一つ改定率に影響するものがあります。現在の年金給付額の水準は、過去の特例措置において、物価下落率の累積が2.5%あります。これが解消されると、マクロ経済スライドによる調整率によって改定率も変化してきます。

このスライド調整率では、物価上昇がある程度大きければ、スライド調整によって改定率が物価上昇率より低く抑えられ(上記の見込でゆくと0.9%は上昇率から引かれる)、物価上昇が小さければ、調整によって改定率に変化はなく、物価が下落した場合はスライド調整を行わず、改定率には下落率が反映されます。

上記のことを考えると、このスライド調整は、年金資産の減少を物価上昇によって、ある程度吸収するような策と言えるでしょう。

日本年金機構、物価スライド率について→http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3245

日本年金機構、年金額の計算に用いる数値 →http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3899

★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102

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