0274 所得税78 譲渡所得8 譲渡の範囲

譲渡は資産の移転そのものを指しますので、幅広い意味の取引事象となります。具体的には以下のような場合に譲渡として扱われます。

(1)売買い
所有する動産、不動産を売却したときに得る、資産の増加益が課税対象となります。

(2)固定資産の交換
交換の場合は、譲渡する資産も取得する資産も固定資産で、かつ同種のものしか認められません。同種のものとは「土地 対 土地」「船舶 対 船舶」というような交換です。譲渡所得としての交換では原則、時価として取得計算されますが、交換差金(交換する固定資産価値の差額)から計算するケースもあります。尚、交換として認められる同種の区分、条件については細かい規定があり、また、土地や建物の交換については様々な特例が在ります。

(3)競売
競売についても様々なケースがありますが、よくある例では融資を受ける条件として、担保性の高い土地や建物等に抵当権を設定され、返済不能に陥ると抵当権行使によって競売にかけられ売却(換価)されるケースです。こういった場合、現実には「資力を喪失して債務の弁済が著しく困難な場合」に該当することが殆どなので、課税されることはありません。

(4)公売
公売は上記の競売と似ていますが、公売は税金を滞納している場合に国がその滞納額に見合う資産を差し押さえて最終的に売却(換価)します。公売も競売も売却時に裁判所が関与しますが、裁判所の役割は売り手と買い手の仲介役で、売却収入は債権者である担保権者や国で、債務にあたる額を完済して残額があれば元所有者にも収入があります。

(5)収用
道路や河川の整備、公園や学校をつくる等の公共的な目的によって、国や地方自治体が必要な土地等を買い取る制度です。これには幾つかの特例があります。

(6)限定承認による相続、物納
限定承認につていは前前回のブログを参考にして下さい→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130513
物納は相続にだけ認められている制度です。原則、納税は現金のみですが、その資力や担税力を考慮して手続きによって認められるた場合のみ、現金以外の物による納税を可能としています。しかし換金しやすい物的資産とされています。この物納も譲渡の一種です。

(7)贈与、遺贈
相続、遺贈、贈与は、相続税贈与税として課税されますが、これは財産を受取った側が納める課税で、財産を渡した側の課税が譲渡所得にあたり、様々なケースによって課税における計算が異なってきます。低額譲渡や無償譲渡が贈与に当たりますが、
このあたりの簡単な解説は当ブログ0268で→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130421

(8)財産分与
財産分与とは、つまり婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産を離婚等の理由で分割することですが、パンを二つに割った様にはいきません。婚前からの財産等は分与の対象にならず、また婚姻期間における不動産等の取得は夫婦のうちどちらかの名義になっていますので、分与をすると名義の変更が発生し、これが譲渡に該当します。この課税関係では受取った側には通常、課税はありません。しかし、譲渡した側には譲渡所得としての課税が発生します。が、これも現在の不動産価値の上昇からみると増加益として課税されることは希なケースと言えます。

(9)代物弁済
債務の弁済は通常、現金で支払いますが、相手側の承諾があれば現金以外の物によって弁済が可能とされています。課税関係は、例えば500万円の債務の弁済に、所有している時価800万円の土地を譲渡することで債務の完済が成された場合、差額の300万円が譲渡所得の対象となり、課税の可能性が出てきます。しかし、代物弁済の場合も競売と同様で、債務超過であるような状態では非課税となる可能性が高いと言えます。
また、逆の場合、800万円の債務に対して土地の代物弁済が500万円しかなく、その不足額に対して相手側が回収不能と判断して500万円の代物弁済を完済と認めた場合、相手側の会計は土地取得額が500万で不足の300万円は貸倒損失での処理となります。

上記の他にも現物出資や法人に対する贈与、借地権や地役権の設定で土地を他人に使用させた場合など、譲渡所得における譲渡の範囲は様々なケースを想定して幅広いものとなっています。

国税庁、特殊関係者間の不等価交換→http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/joto/03/01.htm
国税庁、競売による取得→http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hotei/6/01.htm
国税庁、収用により土地、建物を売ったときの特例→http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3552.htm
国税庁、離婚して財産をもらったとき→http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4414.htm
国税庁、「対価を得て行われる」の意義→http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6113.htm
国税庁、譲渡所得関係→http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm

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